2016.06.28
銀座マルディ・グラシェフ、和知 徹さんによる、肉料理でめぐる世界旅行記
初めてのフランス留学中に、
イギリス人作家フォースターの小説を映画化した、
「眺めの良い部屋」を観た。
舞台はイタリア、花の都フィレンツェ…
暮れなずむ街角はオレンジ色に染まり、
上手く言えないけれど、そのあまりの美しさに、
感極まって涙が溢れた。
あのときの感動を胸に抱きつつ、
それから何度となく、フィレンツェを訪れた。
自分の店を開き、人も育ち、余裕が出てきたある年。
スタッフを引き連れ、
ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナを食べ尽くすツアーに出た。
ずっと興味があって、計画していた旅。
しかし、毎日ビステッカを食べる為には、
人数が多い方が良いに決まってる!と考え、
人が育ち、チームができるのを待っていた。
だから、予習はバッチリ!
前の店で一緒に働いた後輩も、ちょうど今、キャンティのリストランテで働いている。
機は熟していたのだ。
昼、夜、昼、夜、昼、夜……
赤ワインぐびぐび、ビステッカ……
赤ワインぐびぐび、ビステッカ……
呪文の様に食べまくる。
市場でオヤツに牛モツのパニーニ、
肉屋でサラミ、
赤ワインぐびぐび、ビステッカ……
綺麗なフィオレンティーナのシニョーラに目もくれず、
目は肉に♡マークになっていた。
そして旅の中盤、
海岸から少し入ったボルゲリの宿に着く。
あんなに毎日牛肉を食べているのに、身体が楽なのだ。
少しも胃もたれせず、
むしろ、また食べたくなるトスカーナの牛肉。
塩と胡椒でシンプルに焼き上げているのが、
その魅力ではあるのだけれど、
いったい、この肉は、
何を食べ、どんな環境で育ち、屠畜してからどのくらい熟成させているのか?
食べているだけでなく、それを追求したくなった。
そう思ったら、いても立ってもいられなくなり、
足は、カリスマのいる肉屋に向かっていた。
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