2016.08.19
銀座マルディ・グラシェフ、和知 徹さんによる、肉料理でめぐる世界旅行記
【今までの旅行記はこちら】
和知 徹の世界肉旅行 ぬりえの旅(1) 和知 徹の世界肉旅行 ぬりえの旅(2)
ヨーロッパの旅の続きは、またあとで。
ここで、New Yorkの話をしよう。
マルディグラを立ち上げるために、
何度も訪れた思い入れのある都市。
五番街を歩けば、ディスプレイが華やかで、街を行き交う人の波に揉まれ、
映画の中のワンシーンに、自分が迷い込んだような錯覚に陥る。
白人、黒人、アジアは勿論、中米、南米、東欧、ロシアなど、
ありとあらゆる所から人が集まり、
自国のコミュニティーを作り上げ、料理屋もひしめき合う。
だから、街を歩き、気になる店に入れば、言語も違えば匂いも違う。
刺激的で飽きない。
飽きないどころか、何度も来ないとわからない魅力があるのだ。
そんな中、一番のお目あては、ブルックリンにある「ピーター・ルーガー」だった。
今でこそ、日本にもアメリカの人気ステーキハウスが出店しているが、
あの頃はまだ、プロのレベルでT-ボーンステーキを語れる人なんかいなかったから。
先ず、熟成した肉の香りに酔いしれた。
そしてオーブンでも、フライパンでもなく、ましてや炭焼きでもない、
1,000度近くなるグリルで一気に仕上げるプロセスに、驚愕した。
焼きあがった肉を、極めて慎重にテーブルに運んでくる店の男性。
たまらず、わーーっ!と手を出そうとして、
危ない!と怒鳴られた。
それもそのはずで、皿ごと焼いていたから尋常ではないほど熱かったのだ。
はやる気持ちを抑え、やっと肉を口にしたら……
!!!!!!!!!!!!!!!!
和牛とは全く味わいのベクトルが違う。
トスカーナで食べたビステッカともまた違う。
もう一切れ、もう一切れと食べまくり、夢中で平らげた。
香ばしさや甘味が口中に広がり、鼻から熟成香が抜け、
ワインを流し込むと旨味と渾然一体になった。
一夜にして、T-ボーンステーキの虜になったのだ。
帰り道のタクシーは、ヒスパニック系の兄ちゃんが、
ガンガンにカーステレオからヒップホップを流していた。
こっちまでテンションマックスになって、
橋を渡る頃には、絶対また来る! と誓っていた。
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