2016.07.27
銀座マルディ・グラシェフ、和知 徹さんによる、肉料理でめぐる世界旅行記
Photo:MAX HARVEST INTERNATIONAL S.R.L.
ボルゲリから一路、キャンティへ。
ヴィラのあるワイナリーに目星を付けて、宿泊予約をしていた。
ワインやサラミにパンを買い込んで、ワイワイやる気満々!
でも本当にしたかったのは、キアニーナ牛を焼くこと!
だから、キッチンが付いているヴィラは、必須条件だった。
そしてせっかく焼くなら、旨い肉を分かってる肉屋しかない。
頭の中は妄想が膨らみ、
外科医の如く、イメージトレーニングをしまくる(笑)。
買いに行く肉屋は、もちろん決まっていた。
ダリオ・チェッキーニの店しかなかった!
マンジャーレ!
カンターレ!
アモーレ!
文字通り、喰らい、唄い、愛するイタリアを、
全身で表現する情熱の男だ。
今でこそ、肉屋の目の前に食事ができる店も出したが、
私が行った当時には、まだオープンしていなかった。
その代わり……、大盤振る舞いの試食の嵐!
思わず心配になったが、会話が弾み、
あれもこれもと買い過ぎてしまうくらいに盛り上がったのだ。
そこで、忘れられないダリオの料理に出会った。
握り飯の様な形にして焼いたハンバーグ!
ソースは、赤いパプリカのモスタルダだ。
パプリカの甘味と穏やかなマスタードの刺激が最高で、
もう一つ、もう一つと、奪い合いになった。
密かにトスカーナ・ハンバーグと名付けて、
やってみよう! と目論んでいた。
ま、ダリオには、ヴォーノ、ヴォーノ!と褒めまくっていたんだけどね(笑)。
さて、ダリオの見立てで買い込んだ肉を焼いて食べる夜…
ワインも張り込んで、万全の準備をした。
果たしてそれは……、
忘れられない夜になった。
草を食み育つ牛の、食べ飽きない味の記憶が脳裏に焼き付いた。
そして十年後の東京。
ダリオがマルディ グラへやってきた!
トスカーナ・ハンバーグをこしらえることで、
ダリオに恩返しが出来た。
彼は覚えていてくれて、涙を流して喜んでくれた。
何度も何度もハグをして、
二人して涙と笑いが止まらなかった。
嬉しいね。
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