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2016.09.20

和知 徹の世界肉旅行 ぬりえの旅(7)

和知 徹の世界肉旅行 ぬりえの旅(7)

素材を見直すきっかけをくれた、バスク

舞台は再びヨーロッパ。スペイン、バスクへ……。

 

ずっと憧れていた土地。
バスクの小さな巨人に、会ってみたかった。
気は優しくて力持ち。旨いものが大好きで、話が尽きない人々。

 

何はともあれ、バルに行かなくちゃ!
朝早くからコーヒーと軽食を出し、昼は簡単な煮込みとプランチャ。
バルは訪れる時間によって、さまざまな顔を見せる。

 

そして、お待ちかねの夜だ。
頬っぺたが落ちそうに旨いハモンを、好きなだけ切ってもらう。
パンをかじり、微発泡のチャコリを浴びるように飲む。
でも、それはまだまだ宵の口の話。
バルは、さらに深夜まで盛り上がる。
料理もいろいろ。
季節ならジビエをシンプルに焼いてもらったりもするけれど、白眉は牛肉なんだなぁ。
真っ赤なリブロースは、サシはまったくなくて筋肉質。
かといって、固いんじゃない。しなやかなアスリートのイメージ。
炭火でジワジワ焼き始めると、店内には濃厚な香りが立ち込める。
それは不思議と、バスクの森の中に入ったような、木の実や植物を感じさせるんだ。
野生の山牛だね。
途端に、ラテンな赤ワインをぐいぐい飲みたくなる。

 

はやる気持ちを抑えつつ待っていると、お目当てのステーキが来た。
まわりはカリッと焼けて、中は闘牛士の振り下ろす真っ赤なケープと同じ色だ!
ナイフを入れ、すかさずかぶりつくと、凝縮した旨味と肉汁がほとばしる。
それは、若牛にはない深い味わい。
歯にあたると跳ね返る弾力は、堪えられない嬉しいテクスチャーだ。
高揚しながら肉を喰らい、その肉質の良さを十二分に堪能するころには、
ワイワイガヤガヤ、賑わう店内の空気も最高潮。
最後のワインを飲み干すと、砂浜をフラフラ歩いて酔いを覚ました。

 

翌朝起きて、まだボーッとした頭で街を散策すると、
昨日のバルの親父がもう店先を掃除してる!
一体いつ寝ているのか、心配になったんだよね。

 

日本にいるときのストイックな生活から解き放たれ、
ラテンのリズムに身体が目覚め、喜ぶ。
バスクの豊かすぎる自然と食材、人を優しく受け入れる心に触れたことが、
あらためて、素材を見直すきっかけになった。
自分の料理が、大きく変化していくのを感じた。
想像すると、ワクワクが止まらなかった。

マルディ・グラ

〒104-0061

東京都中央区銀座8-6-19 野田屋ビル B1F

  • 03-5568-0222

和知 徹

和知 徹

骨太で豪快な料理が魅力、銀座のフレンチの名店【マルディグラ】シェフ。ブルゴーニュの一ツ星「ランパール」で半年間研修後、87年「レストランひらまつ」入社。ひらまつ在籍中の96年、パリ「ヴィヴァロワ」で3カ月研修し、帰国後ひらまつ系列の飯倉「アポリネール」料理長に就任。退職後、98年銀座「グレープガンボ」の料理長を3年務める。01年、独立。和知 徹といえば、肉料理とも言われるほど。