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2016.10.11

和牛を知る 基本編

「和牛とは?」と聞かれて「国産の牛」と認識しているならば、誤解しているかもしれない。また「黒毛和牛」は「霜降り」、というイメージを持つ人も多いだろう。
これはほぼ、正しいといえる。でもそれ以上、和牛について語れるだろうか?
そこで身近なようで、じつは分かっていない和牛について、ちょっと学んでみたい。知れば知るほど、より美味しくいただけるはずだ。

和牛を知る 基本編

和牛4種をご存知ですか?

和牛とは、国に認定された日本の固有品種の牛のことで、「黒毛和種」、「褐毛和種」、「日本短角種」、「無角和種」の4種類がある。
その中でも和牛の代表といえるのが、刺しが入ったやわらかい霜降り肉で、香り高い肉質が魅力の「黒毛和種」だ。じつは和牛の約9割がこの「黒毛和種」。だから和牛といえば、黒毛和種や霜降り肉をイメージするのは、間違っていない。

もちろん残りの3種の和牛、通称“あか牛”とも呼ばれる「褐毛和種」や、旨みのある赤身肉が話題になり、最近価格が高騰している「日本短角種」、そして昭和40年代の霜降り重視+輸入の自由化により、価格とともに頭数も激減してしまった、「無角和種」、などの中にも「黒毛和種」に負けない人気の銘柄牛があり、肉好きのあいだにもファンは多い。

 

和牛と国産牛の違い。ブランド牛とは何か

では、こうした和牛と国産牛と呼ばれている牛たちとの違いは何か?

簡単に言えば、和牛が前述4種間だけの交雑種なのに対して、流通するほとんどの国産牛は、まだら模様が特徴のホルスタインなどの乳牛種と「黒毛和種」を交配させて生まれた牛だ。もちろん日本での飼育期間が海外での飼育期間より長いことは条件だが、それはつまり海外で生まれても、こうした条件を満たせば国産牛といえる。

一方で和牛は、限定的な交配で生まれ、大切に育てられた特別な牛だ。こうしたブランド和牛を名乗るからには、それぞれのブランドごとに厳しい基準がある。
たとえば「黒毛和種」には、日本三大銘柄牛である神戸ビーフ、松阪牛、近江牛が含まれるが、どれも厳格な認定基準を持つ。人間ならば血統重視の名門な家柄に生まれ、エリートな教育がなされ、一流大学に入学するような感覚だ。

 

中でも基準が厳しいことで有名な神戸ビーフの場合、兵庫県内で生まれ、兵庫県内の食肉センターで処理されたた但馬牛であること、そして年間7,000先頭ほどしか定義されないその但馬牛の中の生後28~60カ月の牛だ。また雌は未経産牛、雄なら去勢牛、さらに格付け等級から枝肉重量まで細かい基準をクリアしなければ認定されない。

 

このように、それぞれのブランド牛が規格外を認めないことで、私たちは強い信頼を持って、高級な肉を味わうことができるのだ。
もちろん松阪牛、近江牛、神戸ビーフという三大ブランドだけではない。全国にはほかにも多くのブランド和牛があり、どれも基準が定められて、育てる環境や飼料にこだわり、高い肉質をキープしている。
あまり知られていないが、最近よく見かける日本食肉格付協会による、“A5”格付けの和牛を一番出荷しているのは山形牛だったり、等級や霜降り度合い、BMSナンバーの数が8以上のものしか認定しない(これは松阪牛や近江牛よりも基準が厳しい)仙台牛など、知名度こそないものの、良質の銘柄牛は多い。
※肉の格付けについては、コチラ→http://www.nikumedia.com/word/rank.php

 

産みの親(繁殖農家)と、育ての親(肥育農家)

たとえば日本の畜産業は、コスト面などの理由から、種付けを行なって子牛を出荷する、要は生みの親とも言える、繁殖農家と、それを肉牛として飼育して出荷する、いわゆる育ての親の肥育農家に分かれる。
しかし手間暇がかかっても理想的といわれる、繁殖飼育一貫の経営にこだわる農家もあり、そこでは和牛を子牛から丁寧に育てて健康な状態で出荷をしている。
ほかにも国産のエサを一頭一頭に声をかけながら、人間の手であげ、牛の体調に気を配るなどを徹底する小規模農家や、音楽を聞かせながら育てた牛や、オリーブの搾り果実、もち米などを与えて育てられた牛というのも聞いたことがあるのではないだろうか。
このように、農家ごとに独自のエサを開発したり日々努力を重ねており、一頭一頭丹精に育てられている。
当メディアでも特徴的な飼育方法をしている農家さんたちに取材をしている。
興味がある方は、ぜひ読んでほしい。
味はもちろんだが、飼育方法やこだわりを聞くと、より贔屓にしたくなる和牛もあるはずだ。

『牧場探訪記事の一覧はこちら』

 

もちろんこのように手間ひまかけたプレミアムな和牛は、海外でも高く評価されている。ただ、日本以外で食べられている和牛は、前述したものとは、ちょっと違うケースもあるようだ。

 

「銀座で食べた和牛はすごかったよ。口の中で溶けた! 本当に感動した」
韓国人でアメリカ在住、オーストラリア留学経験のある20代の男性は、数年前に日本で食べたという和牛を、そう絶賛する。
“マーブルドビーフ”、つまり刺しが入った和牛が好きだという彼だが、海外では、和牛を選んでも、とろけるほど肉を口にした経験はなかったという。これは、彼が海外のレストランで和牛を選んでいても、それはアメリカやオーストラリアで育った“和牛”を食べている可能性が高いといえる。
つまり日本が認定する和牛ではなく、“WAGYU”と呼ばれる黒毛和種の血を引く、海外で育った牛だ。

 

日本が誇る和牛は、世界で今、どんな風に食べられているのか? 海外でもA5などの格付けは存在するのか? いや、そもそも格付けについて説明できるだろうか?
次回は肉の格付けや、海外での和牛、WAGYU事情についも考えてみる。

 

 

◎和牛を知る 第2弾 「日本の牛を守れ 編」 http://www.nikumedia.com/article/column/1429/

 

(文:三宮 千賀子)