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2016.11.11

イエニクのススメ 生姜焼き編 第2回

イエニクの生姜焼き編!「大人の肉ドリル」でおなじみ、松浦氏がお家でおいしいお肉料理を満喫できる肉レシピを公開!

 

イエニクのススメ 生姜焼き編 第1回

イエニクのススメ 生姜焼き編 第2回

まずはどんな肉を選ぶ?

「仕事は仕込みが9割」。そんな新書のタイトルがあってもよさそうなものだが、生姜焼きの「仕込み」もとても重要だ(言うまでもないけれど)。

 

まず生姜焼きに使いたい肉は2種類に大別される。ひとつはスーパーなどで「生姜焼き用」として売られている肉。もしくはバラ肉の薄切りだ。

「生姜焼き用」の場合

「生姜焼き用」の肉は少し厚めの2~3mmにカットされ、一枚一枚ていねいに並べて焼くようなタイプの肉だ。一定の厚みがあり、豚肉らしさも味わえる。その「らしさ」を活かすような下準備をしたい。

 

一般に生姜焼き用の肉として売られている部位はロースか肩ロース肉が多いが、ふつうに家庭で使うならロースよりも肩ロースのほうが向いている。いわゆるロースは脂肪部分と赤身が明確にわかれていて、赤身部分にサシはあまり入っていない。強火で焼き目をつけるような調理法より、大きなブロックでじっくり火入れをしたり、薄切り肉ならば70℃くらいの温度でしゃぶしゃぶするような加熱のほうが適している。

 

生姜焼きには香ばしさもほしい。となれば、一定の強さの火力で焼き目や焦がしも入れたいところだ。赤身部分にサシの入らないロースでは、かたくなったりジューシーさを欠いた仕上がりになりやすい。しかし、肩ロースなら肉の間に脂肪がほどよく入っている。生姜焼きのようにきっちり焼きたいメニューに使うと食感や味のノリもいい。

 

2~3mmという厚みのある肉に味を入れるには時間がかかるし、そこまで漬け込んでしまうと肉自体が変性してしまう。せっかくの厚い肉ならば、素材の味を活かしながら外側に味をしっかりまとわせるほうがいい。そのためには漬け込むのではなく、粉を振り、揉み込んでおく。すると肉内部の水分を外部に逃がすことなく、しかも表面で糊化した粉の成分がタレとよくからむ。生姜焼き用の肉は「漬け込まず」「粉を振る」を基本に据えて考えたい。

「バラスライス」の場合

もうひとつの候補は、1.5~2mm程度にカットされたバラ肉のスライスだ。本来バラ肉(の赤身部分)は多少のかたさを伴うが、薄切りにするとかたさをそれほど感じなくて済む。「生姜焼き用」がていねいに焼く肉だとしたら、こちらは強火にかけたフライパンでジャージャー炒めてもいい。

 

肉の赤身は強火で炒めると収縮してかたくなるが、薄切りにすればそこまでかたさを感じることもない。脂身の比率の多いバラ肉だから味わいもしっかり残る。バラ肉の薄切りは、こと生姜焼きにおいては幅広いアプローチが可能な肉なのだ。

 

もちろん多少の粉を振ってもいいが、脂身の多さを考えると脂分を衣にとどめてしまうことになるし、薄切りに対してまとうタレの量が相対的に多くなり、味つけが濃くなってしまう可能性もある。せっかく手軽に扱えるバラ肉の薄切りをセレクトしたなら、余計な手をかける必要はない。漬け込みはしてもいいし、しなくてもいい。その選択次第で、タレの味つけも変わってくるが、前出のレシピとの対比のためにも今回は「漬け込む」が「粉を振らない」という方向で考えたいところだ。

調味液に漬け込む効果

ただし、肉を調味液に漬け込むという工程には矛盾した複数の効果が考えられる。例えば、調味液に塩分が含まれていれば肉は脱水され、かたくなってしまうかもしれない。その一方で砂糖が入っていれば保水力が高まりジューシーな(≒やわらかい)食感が得られるかもしれない。そのほか、しょうがや玉ねぎには「肉をやわらかくする成分」が含まれている。加える調味料や野菜の間だけでも「やわらかさ」「かたさ」がせめぎ合う。

 

例えば肉をやわらかくする食べ物といえば、マイタケ、キウイ、パイナップル、パパイヤ、イチジクあたりが有名かもしれないが、その他にも、生姜、にんにく、大根、玉ねぎ、生姜、セロリ、ピーマン、パセリ、パプリカなども肉をやわらかくする候補となる。

 

作り手の数だけ、そして肉の数だけ生姜焼きの正解はあるのだ。

 

イエニクのススメ 生姜焼き編 第3回

 

松浦 達也

松浦 達也

東京都武蔵野市生まれ。編集者・ライター。さまざまな「食」を「食べる」「つくる」「ひもとく」フードアクティビスト。調理の仕組みや科学、食文化史などを踏まえ、『dancyu』などの料理誌から一般誌、新聞、書籍、Webまで幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオなどでは食のトレンドやニュース解説も。近著の『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(マガジンハウス)ほか、自らも参加する調理ユニット「給食系男子」名義で企画・構成を手がけた『家メシ道場』『家呑み道場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はシリーズ10万部を突破。

ブログ「うまいものばか!」

http://umaimonoholic.blogspot.jp/