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2016.11.21

イエニクのススメ 生姜焼き編 第3回

イエニクの生姜焼き編!「大人の肉ドリル」でおなじみ、松浦氏がお家でおいしいお肉料理を満喫できる肉レシピを公開!

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イエニクのススメ 生姜焼き編 第3回

玉ねぎを入れるか、タレを投入するか……

前回、「生姜焼きは仕込みが9割」と書いた。そのこと自体にウソはない。だが一方で「焼き」もまた9割である。なんといっても生姜「焼き」なのだから。今回は生姜焼きの「焼き」について考えてみたい。

 

と書き出したところ、20秒ほどビタッと筆が止まった。生姜焼きにとって焼きが重要なのは間違いないが、実は意外と生姜焼きの「焼き」は難しい。肉が「薄い」のに「焼き目」をつけたいという矛盾に始まり、「玉ねぎを入れるか」、焼いている間に「タレを投入するか」問題もある。

 

何が難しいのかというと、豚肉にある程度火は通したいが、薄い肉に焼き目をつけようとすると硬くなりやすい。しかも下味と水分とともに入れた肉は、内部から水分が出やすく、その水分が焼き目の邪魔になる。なのに、加熱だけはきっちり進み、焼き目もつかないうちに肉がかたくなっていく。肉のうまみを炒め玉ねぎにも反映させようにも玉ねぎのほうが加熱に時間がかかるし、タレを投入すればさらに加熱は進む。やりたいことと、調理の筋道が合っていない。生姜焼きの「焼き」においては難題が山積しているのだ。

 

だが嘆いていても仕方がない。課題は解決するためにあるもので、手順を追いながらひとつずつ考えていこう。ただし、ここからは個人的な嗜好も反映させていただく。「味」という曖昧なものの前では、せめて「嗜好」という基準くらいないと物事は決定できないからだ。

パターンを学び、失敗しない焼き目をつくろう

まず「肉に適切な火入れをする」ことを考えると、(1)肉を厚くする、(2)火入れの時間を短縮する、(3)火を弱くするという三方向の選択肢がある。

(1)はポークジンジャーという別の料理(?)になってしまうし、(3)は焼き目がつかない。というわけで、ここは(2)。火入れの時間を短縮するという選択肢になる。

 

下味をつけた肉の水分問題は、(1)(水分が入る)下味をつけない、(2)水分が出にくい加熱をする、(3)水分が出ても焼き目がつくような工夫をする、といったところか。

(1)は気分によっては下味なしでもいいが、下味ありの生姜焼きを食べたいときの解決策もほしい。(2)はフライパンで加熱する限り、難度が高い。ただし水分が出ても即蒸発するくらい強火にすれば焼き目はつく(しかし肉はかたくなりやすい)。(3)は小麦粉や片栗粉など水分を吸うタイプの粉をはたけば、フライパンの接地面まで水分が浸出しづらくなり、焼き目がつきやすくなる。(2)と(3)のあわせ技が有効か。

 

玉ねぎの投入については

(1)玉ねぎを入れない、(2)加熱時間が短くて済むよう加工する、(3)肉と別に加熱する、の三択。

タレもほぼ同様に考えていいだろうが、玉ねぎ問題は悩ましい面もある。(1)は論外としても、(2)の加熱時間を短くするには、薄くスライスするのが手っ取り早い。だが、厚切り玉ねぎのシャクッとした食感や焼き目の香ばしさも捨てがたい。となると(3)の玉ねぎの別加熱も視野に入ってくる。先に玉ねぎに焼き目をつけ、タレを入れて味をなじませるというところか。

 

まとめると、肉は短時間の加熱にとどめ、肉に粉を振るか強火加熱で焼き目を入れる。下味を入れる、入れないかで味の傾向が変わるので複数のパターンを試しておきたい。玉ねぎの別加熱は確かに有効かもしれないが、手数と時間がかかるのを日常で使えるレシピにどう落とし込むか。

 

というあたりを踏まえた上で、次回、生姜焼き編最終回! 今回も変動するパラメーターが多いので、2パターンの異なるレシピを提案したいと思う。

松浦 達也

松浦 達也

東京都武蔵野市生まれ。編集者・ライター。さまざまな「食」を「食べる」「つくる」「ひもとく」フードアクティビスト。調理の仕組みや科学、食文化史などを踏まえ、『dancyu』などの料理誌から一般誌、新聞、書籍、Webまで幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオなどでは食のトレンドやニュース解説も。近著の『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(マガジンハウス)ほか、自らも参加する調理ユニット「給食系男子」名義で企画・構成を手がけた『家メシ道場』『家呑み道場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はシリーズ10万部を突破。

ブログ「うまいものばか!」

http://umaimonoholic.blogspot.jp/