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2016.12.21

牧場探訪「福永牧場」(後篇)

黒毛和牛の産地といえば、三重県(松阪牛)、兵庫県(神戸牛)、滋賀県(近江牛)等をイメージする人が多いはずですが、黒毛和牛飼育頭数のナンバーワンは、じつは鹿児島県です。

鹿児島県産の和牛は、ブランド化される時期が他県より遅かったためか、知名度こそ低いものの、有名ブランド牛にも劣らない肉質を誇っていると食通の間では高く評価されています。今回はそんな畜産王国・鹿児島で「北さつま牛」のブランド化に尽力し、2013年度全国肉用牛枝肉共励会で名誉賞(最高賞)を受賞したこともある「福永牧場」に注目してみました。

【福永牧場前編はこちら】

牧場探訪「福永牧場」(後篇)

手間ひまを惜しんでいては、美味しい肉は提供できない

前篇(記事はこちら)では、近隣の畜産仲間たちと切磋琢磨することによって、「北さつま牛」というブランドが作られていったという話をしましたが、福永牧場では、2年前から個人牧場名を冠した「さつま牛ふくなが」というブランドを新たに立ち上げ、独自のブランド展開もスタートしています。

 

気になるのが肉のお味ですが、福永牧場で育てられた和牛の魅力は、きめ細やかな肉質、とろけるような口あたりに加えて、サシが入っているわりに胃にもたれない点にあります。通常の霜降肉の場合は、最初は美味しくいただけても何枚か食べるうちに「脂が強すぎて、もういいや……」と感じてしまうことが多いのですが、福永牧場で育てられた牛は脂がすっきりしていて、何枚でもペロリと食べられてしまいます。
その秘密は「牛に与えている飼料にある」と福永充さんはおっしゃいます。

 

「脂がすっきりしているのは、パイナップル粕を配合した独自の飼料を肥育前期の牛に与えているからです。パイナップルを与えると、肉の甘みが増すだけでなく、脂に含まれるオレイン酸の割合がぐっと上がるんですよ」

 

オレイン酸とは脂肪酸の一種で融点が低いため、オレイン酸を多く含んだ肉は口に入れた瞬間に体温で溶けはじめ、とろけるような口当たりになるといいます。またオレイン酸には悪玉コレステロールを減少させ動脈硬化を防ぐ健康成分としての働きもあるのだとか。

釜で炊いた飼料を与えたら肉の風味や光沢が明らかに変わった

「もうひとつ、福永牧場ならではの工夫といえるのが、肥育後期にトウモロコシや大豆、大麦などをブレンドした飼料を大釜で一日じっくり炊いてから与えているという点です。こんな面倒なことをやっているのは、おそらく全国の牧場でも2〜3箇所くらいじゃないでしょうか」

 

飼料を炊いてから牛に与えるという方法は、あまり聞いたことがありませんが、福永さんによれば、こうした餌の与え方は決して目新しいものではなく、昔の田舎の零細農家では当たりまえに行われていたものだそうです。

 

「古くから農家をやっているお年寄りの中には“昔の牛肉は今のものよりもずっと味わい深くて美味しかった”と言う人がいますが、1~2頭の牛を大切に育てていた昔の農家では、家畜にも炊いた餌を与えるのが一般的だったんです。それでうちの牧場でも数年前から昔の農家のやり方を真似てみることにしたのです。給食用の巨大な釜5台をフル稼働させながら飼料を作るのは手間がかかって大変ですが、炊いた餌を与えてしばらくすると、肉の風味や光沢が明らかに変わってくるんですよ」

 

美味しい肉を作ることに、とことんこだわっている職人気質の福永さんですが、一方で熟成肉専門焼肉店「Gyu do!」を鹿児島市内に開いたり、ネット直販をスタートするなど、新たな経営戦略にも積極的に取り組んでいます。

 

「将来的には、自社牧場で生まれた子牛を自社牧場で育てて、それを自社で販売するという100パーセントの一貫経営が実現できればいいなぁ……と思っているんです。農業に関わっている人なら誰もが思っているはずですが、自分で作ったものを自分で売るのが生産者にとっての一番の理想型なんですよ。お客さんが「美味しい!」って言ってくれるのを間近で見ると、仕事の励みにもなるし、もっと喜ばれるものを提供したいというモチベーションにも繋がっていきますからね。さらに繁殖から肥育、販売までを一貫経営で行えば、食の安心・安全も担保できるし、良質な肉を安く消費者に提供することも可能となります。つまり一貫経営は、生産者側、消費者側の両方にプラスに働くというわけです。これからの畜産業には美味しいものを提供するという熱意はもちろんのこと、経営という視点がますます重要になってくるのではないでしょうか」

 

 

福永牧場のお肉が食べられます!

「Gyu do!」

電話:099-223-2044

住所:鹿児島県鹿児島市東千石町12-13 村山ビル1F

営業時間: 11時30分~14時30分 (L.O.14時00分)※ランチ時の予約不可/【平日】ディナー 17時30分~23時00分 (L.O.22時00分)/【金・土・祝前】ディナー 17時30分~00時00分 (L.O.23時00分)

休:不定休

 

 

 

(取材・文:中村宏覚)

福永牧場

〒895-2104

鹿児島県薩摩郡さつま町柏原1566-1

  • 0996-59-8911
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