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2017.03.15

イエニクのススメ 手羽先のから揚げ 第2回

イエニクの生姜焼き編!「大人の肉ドリル」でおなじみ、松浦氏がお家でおいしいお肉料理を満喫できる肉レシピを公開!

今回のお題は「手羽先のからあげ」。第1回目はコチラ

ステーキからハンバーグまで、【家でもおいしい肉を食べよう】コンセプト、イエニクシリーズをご覧になりたいかたはコチラ。→イエニクアーカイブ

イエニクのススメ 手羽先のから揚げ 第2回

手羽先を食べに名古屋まで行ってみた

どんな方向性の手羽先から揚げにするか、実は前回の記事がUPされた時点でもまだ迷っていた。その迷いをそのままFacebookに「どこのオマージュにするか……。風来坊? 山ちゃん? 鳥開? 悩ましい……」と投稿したところ、次々に名古屋にゆかりのある友人たちが自分の好きな店の店名を挙げていくという謎の展開に。そんなつもりはなかったのに、図らずもアンケートが取れてしまう! なんてホクホクしていたところ、結果はなんとも圧倒的!

 

全9票中、8票が「風来坊」(残り1票は「伍味酉」)。ここまで圧倒的な差がつくとは! しかし最近名古屋に行っていない。「甘すぎなくていい!」「風来坊一択!」と熱烈な支持を得ているが、どんな味だったか思い出せない……。

 

というわけで、風来坊の総本山がある名古屋に行ってみることに。

「品川にも出店しているじゃないか」とか「別件の出張ついでじゃないのか」とツッコまれたら(そのとおりなので)、返す言葉もないが、やはり名古屋で食べないことには始まらない。(出張の乗換駅の)名古屋で(在来線のホーム「住よし」のきしめんを食べたあと)久しぶりに本場の「風来坊」を訪れた。

 

加水なしで揚げた後、タレをくぐらせる名古屋式

一口食べて思い出した。風来坊の手羽は「甘すぎない」という声があったが、東京の味に慣れている身にはやっぱりそこそこ甘い。他のチェーンと比べると、甘さは奥に引っ込んでいる印象だが、そこは名古屋めし。ベースの味はそれなりに甘いのだ。もっとも、ただ甘いだけではない。ふくよかな甘さは土台にあるものの、その上で胡椒やガーリックなどパンチの強いシーズニングを利かせてキリッとした味わいを演出している。

 

仕上がりはかなり強い「外食ならでは」の味なので、家庭で再現する場合には要調整。少しやさしめのベースで味をつけ、仕上げのシーズニングで味の強度を調整するのがベストだろう。シーズニングを効かせれば外食の味、土台の味を活かせば家庭らしい日常の味になるはずだ。

 

そして名古屋の手羽先のから揚げは、一般的な「から揚げ」とはアプローチが決定的に異なる。

 

一般的な骨なしのから揚げは肉汁をたっぷり含んだジューシーなものが喜ばれる。しかし名古屋の手羽は筋繊維のしっかりした肉質も特徴のひとつ。皮のカリッとした食感と肉質の凝縮感はある程度本物に近づけたい。なので、以前に紹介したから揚げ(過去記事はコチラ)とは違う手法を取る。肉質はギュッとした凝縮感を大切にしたいので、今回は加水はせずに揚げた後、タレをくぐらせる名古屋式を踏襲する。

 

ところがそのタレについてあれこれ文献を調べてみると、どうもおかしい。なかには「風来坊のタレの比率はみりん9に対して醤油1」なんて書いてあるものもある。さすがにこれは薄いし、この比率でざっくり換算すると塩分濃度が2%前後ということになってしまう。まるで蕎麦屋、それも江戸前のきりっと醤油の立った「もり汁」ではなく、ふつうに飲めてしまうかけつゆレベルだ。しかも醤油の9倍量のみりんを入れるとなると、味としては醤油風味のスイーツレベルの甘さになりはしないか。この比率については、出所のはっきりしない情報よりも食べた印象から実際の風来坊の味わいに寄せたい。

 

ただし、実食した上であれこれ文献を当たってみると、タレにもある程度のジャンク感は必要そうだ。味の強いシーズニングを振るにしても、土台の味が上品すぎては味が合わなかったり、シーズニングに打ち消されてしまう。ふだん使いのしみじみとしたおいしさを備えた上で、ジャンクなシーズニングにも合う味になるよう、調整が必要になりそうだ。

 

さて、次回はいよいよ揚げの方向性について考えてみたい。

松浦 達也

松浦 達也

東京都武蔵野市生まれ。編集者・ライター。さまざまな「食」を「食べる」「つくる」「ひもとく」フードアクティビスト。調理の仕組みや科学、食文化史などを踏まえ、『dancyu』などの料理誌から一般誌、新聞、書籍、Webまで幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオなどでは食のトレンドやニュース解説も。近著の『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(マガジンハウス)ほか、自らも参加する調理ユニット「給食系男子」名義で企画・構成を手がけた『家メシ道場』『家呑み道場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はシリーズ10万部を突破。最新刊、『新しい卵ドリル おうちの卵料理が見違える!』(マガジンハウス)が好評発売中!

ブログ「うまいものばか!」

http://umaimonoholic.blogspot.jp/