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2017.04.05

食と科学のおいしい関係(15)

コンフィは油で煮る調理法のことで、肉でも魚でも野菜でもコンフィ。しかし肉が圧倒的に多いのは、肉が驚異的に柔らかくおいしくなるからなのです。

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食と科学のおいしい関係(15)

コンフィ作りは超簡単。やみつきになるうまさを自家製で

フレンチで必ずと言っていいほど用意されている料理がコンフィ。コンフィといえば鴨が有名ですが、牛のもも肉や豚の肩ロースのコンフィも定番です。

 

コンフィを作るのはとても簡単です。基本は肉の塊を低温の油で煮る、それだけです。塊肉に塩こしょうをしたら、ひと晩寝かせておきます。油で長時間煮るため、表面に塩を振ったぐらいでは味が抜けてしまうからです。だから塩をしたら、ひと晩寝かせて味を染み込ませましょう。合わせてこしょうやタイムなどの香辛料を塗ってもOKです。

 

鍋に油を入れます。さらにローズマリーやニンニクを加えて、風味を増します。油は肉がひたひたになる程度の量で、オイルの種類は好みで。

 

よく使われるのがラードとオリーブオイルです。ラードは豚の背脂を溶かせばできるので、非常に安上がり。肉屋のトンカツじゃないですが、カリッとした油切れの良さと肉らしい風味がたまらない。その代り、カロリーはとんでもないのでご覚悟を。

 

そして肉を煮るわけですが、絶対に沸騰させてはいけません。

 

肉の低温調理が人気ですが、低温調理はたんぱく質が変性する65~68度を目安に加熱します。コンフィの場合、表面に焦げを作ってテクスチャーの違いを出します。そのため、80度以下を目安にします。絶対に沸騰させないつもりで、とろ火で煮てやれば大丈夫です。調理する量が少なければ、低温調理と同様に、袋に入れて炊飯器等で加熱してもいいですね。

 

そして4時間、加熱します。

4時間というのはとても大事な目安で、加熱時間が3時間と4時間では味がまったく違います。3時間までの加熱では、肉は煮た肉の味と変わらず、魅力がありません。ところが4時間を超えると、味のテクスチャーが根本的に変わります。揚げ物の香ばしさに加え、肉の繊維が独特のホロホロとした崩れ方をするようになります。
コンフィはまさにコンフィでしかない味になるんです。すごくおいしい。水で煮たり油で揚げる味とはまったく別物です(牛肉でやると、なぜかコンビーフの味になるのですが(?))。

 

温度自体は低温調理と基本的に変わらないので、時間をかけてゆっくり火を通し、たんぱく質の変性を最小に抑えるという低温調理のメリットがここで生きてきます。ではなぜ油かといえば、肉汁を閉じ込めるためです。水と油は乳化させないと混ざらない。沸騰させないようにゆっくりと油で煮ることで、肉汁がすべて閉じ込められ、非常にジューシーな状態になるわけです。

 

4時間という時間は、塊肉のコラーゲンを分解するのに必要な時間です。コンフィのもう一つの良さは肉のコラーゲンをすべてゼラチンに分解し、それを肉の中に閉じ込めることができる点です。

 

サメやヒラメのような魚や鶏肉などを煮込んで冷やすと煮こごりができます。コラーゲンは68度以上で構成するアミノ酸の鎖状組織が加水分解し、バラバラになります。煮こごりは、こうして溶出したゼラチンがスープを固めたものですが、コンフィの場合、油への溶出は極力抑えられ、肉の内側に保持されます。肉の繊維を支えていたコラーゲンが溶けたことで肉の繊維が溶けたゼラチンと肉汁の中に浮かんだ状態になるわけです。これが特有のホロホロした食感とジューシーさの秘密です。

 

理屈上、コンフィによる肉の変性は、肉汁が閉じ込められる点でも真空パックを使った低温調理と同じですが、油の加熱により表面がメイラード化した香ばしさはコンフィ特有と言えるでしょう。

 

時間こそかかりますが、作る価値は十分。しかも油が外気と肉を遮断するので日持ちします。ラードで作り、真っ白な脂の中から肉を取り出すのは、自宅で作るコンフィのだいご味です。

川口 友万

川口 友万

福岡県福岡市出身。富山大学理学部物学科卒。サイエンスライター。「ホントにすごい! 日本の科学技術図鑑」 (双葉社スーパームック)など著書多数。
毎週日曜日、五反田にて科学実験を体験できるバー『科学実験酒場』https://www.facebook.com/groups/kagakubar/ を開催している。