• TOP
  • Column
  • イエニクのススメ 手羽先のから揚げ 第3回

2017.04.12

イエニクのススメ 手羽先のから揚げ 第3回

イエニクの生姜焼き編!「大人の肉ドリル」でおなじみ、松浦氏がお家でおいしいお肉料理を満喫できる肉レシピを公開!

今回のお題は「手羽先のからあげ」。第1回目はコチラ。第2回目はコチラ

ステーキからハンバーグまで、【家でもおいしい肉を食べよう】コンセプト、イエニクシリーズをご覧になりたいかたはコチラ。→イエニクアーカイブ

イエニクのススメ 手羽先のから揚げ 第3回

違和感の正体とは何か

さて、いよいよ揚げである。実は手羽先のから揚げについて、いままできちんと考えたことがなかった。いわゆるふつうの「から揚げ」のように「外はカリッ」「中やわらかく」「ジューシー」に仕上げればいいものだと思っていた。というわけで、当初は拙著『大人の肉ドリル』の手法を踏襲して加水をし、肉がかたくならないよう、揚げるべきだと考えていた。

 

ところがこの方向を目指して試作を重ねたところ、揚げても揚げてもしっくりこない。外をカリッとさせることはできる。内部を「やわらかく」「ジューシー」に仕上げるのもなんとかなる。ところが外側をカリッとした揚げ上がりにしながら、内部をやわらかくジューシーに仕上げた手羽先を食べると、どうにも違和感が残ってしまう。

 

骨離れが悪いとか、骨から血の色のような髄液が出るだとかいう、物理的な問題ではない。たいした力を入れずともすんなり歯がとおってしまう。その感触が、生理的に気持ち悪いのだ。確かに名古屋で圧倒的な支持を得る風来坊の手羽先のサイズは小さい。スーパーや普通の精肉店の店頭ではほぼ見ないようなサイズの手羽先をしっかり揚げ、しっかりした食感の肉が骨のまわいについている。幼い頃からあの食感に親しんでいるわけでもないのに、やわらかい肉にはどうしても違和感がぬぐえない。

 

おいしさを構成する「感覚要素」。視覚、嗅覚、触覚など味覚以外の感覚もおいしさを底上げする構成要素だ。そして視覚のように思い込みが味に与える影響は思いのほか大きい。

 

たとえば、調理の手法として分子ガストロノミー(分子科学調理)を駆使するレストランでは、一般に認知されているメニューを要素分解し、再構築する。使われる素材は同じ。だが食べ手の思い込みを逆手にとって、見た目や食感をまったく別の仕立てに変えることで驚きを演出する。同じ素材で組みたてられた料理でも形が変わるだけで、そこに謎解きのような楽しみが生まれる。

 

とはいえ、先入観を覆すのが、いいことばかりとは限らない。再構築や謎解きというエンターテインメントが前提ならばまだいい。だが、食べ手に心の準備もさせずに思い込みを覆してしまうとおいしさにつながらず、違和感だけを残すパターンもある。ジューシーで身のやわらかい手羽先のから揚げは、まさしくそういう代物だった。

 

骨つき肉はかぶりつき、引きちぎるように食べて、初めてその味わいを満喫できる。となれば、肉質には一定の弾力が必要だ。長きに渡って、手羽先のから揚げに親しんだ名古屋人ならなおさらのことだろう。ただし東京に生まれ育った人間としては、名古屋の手羽先から揚げは少し「肉感」が物足りない。

 

さらに言えばスーパー店頭で販売されている、手羽先のサイズは専門店で使っているものよりも大きく、かつサイズにはバラつきがある。火入れが難しい骨つき肉ということも相まって、一定の“のりしろ”が必要にもなる。

 

目指すは外側「カリッ」とさせつつ、内部は一定の弾力とジューシーさを両立させる。タレは適度なジャンク感にも対応しながら、子どもにも安心して食べさせられるような素材使い。

 

というわけで「加水なし」+「2度揚げ」+「ベンチタイム」+「一定のジャンク感もある、透明感のあるタレ」というレシピは次回、手羽先から揚げの最終回にてご紹介!

松浦 達也

松浦 達也

東京都武蔵野市生まれ。編集者・ライター。さまざまな「食」を「食べる」「つくる」「ひもとく」フードアクティビスト。調理の仕組みや科学、食文化史などを踏まえ、『dancyu』などの料理誌から一般誌、新聞、書籍、Webまで幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオなどでは食のトレンドやニュース解説も。近著の『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(マガジンハウス)ほか、自らも参加する調理ユニット「給食系男子」名義で企画・構成を手がけた『家メシ道場』『家呑み道場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はシリーズ10万部を突破。最新刊、『新しい卵ドリル おうちの卵料理が見違える!』(マガジンハウス)が好評発売中!

ブログ「うまいものばか!」

http://umaimonoholic.blogspot.jp/