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2017.07.26

【現代版】みんな飲食店とどう付き合ってるの?(後編)

いまだからこそ考えたい、飲食店との距離感。年代とともにお店との関わり方にも変化があることが、今回のアンケートの結果でわかりました。

【現代版】みんな飲食店とどう付き合ってるの?(前編)

【現代版】みんな飲食店とどう付き合ってるの?(後編)

紹介したり、紹介されたり、現代は「調整型」の存在が目立つ

前回、「【現代版】みんな飲食店とどう付き合ってるの?」ではアンケート調査を元に飲食店と客との関係や「常連」について考えてみました。今回は実際、飲食店での振る舞いについて、その最新事情も含めた意識調査から、考えてみます。

 

今回、印象的だったのは、「店の紹介や予約」にまつわる質問で、昨今の飲食店事情を象徴するような調査結果が出たことです。最近、特に東京の飲食店では、会員制の店やそうでなくても予約の取りづらい事実上会員制のような店が増えています。自分の周りでも、ふつうに予約を受け付けている店でも、常連に連れて行ってもらいたがる人が増えた印象があります。

 

その理由が上記のような飲食店トレンドが理由か、客の腰が引けているのかはわかりません。おそらくどちらの理由もあるのでしょう。

 

「友人、知人、上司や部下などに教えてもらったお店(実際に一緒に訪問した場合に限る)がある」(Yes76.0%/No24.0%)、「人に連れって行ってもらったお店が気に入り、再訪した経験がある」(Yes74.9%/No25.1%)とそれぞれ4人に3人がYesと回答しています。

 

もっとも経験と志向は微妙に異なるようで、「友達が、行きたかったレストランの常連だということを知った。どうする?」という設問には「何もしない。自分で予約を入れる」(35.5%)「当てはまる選択肢はない」(15.3%)「友人に予約だけを依頼する」(7.7%)。全体の約4割が「友達に連れて行ってくれと頼む」(41.5%)と回答したものの、先の質問の「連れて行ってもらった経験がある」よりもかなり低い数字となっています。

 

つまりスタンスとしては「連れて行ってもらう」のはあまり好ましくはないものの、現実には連れて行ってもらうケースも少なくないということのよう。

 

 

Q6の「次のシーンで、ご自身の気持ちにもっとも近いものをお選びください」という設問。これは「スタンス」を問う選択肢となっていました。設問の内容は以下のとおり。

 

「食通の友人と一緒に友人が常連だという寿司屋に行った。その寿司屋はとてもおいしく、大変気にいったため、帰り際、寿司屋の大将に直接次の予約を入れた」という状況設定に対する回答の選択肢が「正しい」「間違っている」「後日、予約を入れるべきだ」。さて、回答はいいかに。

 

回答を見ると「正しい」(43.2%)、「間違っている」(4.4%)、「後日予約を入れるべきだ」(22.4%)、「あてはまるものはない」(20.8%)、「その他」(9.3%)と全体の3割が選択肢のなかでは回答を完結させていません

 

その分、自由回答への回答率が高く、なかでも目立ったのが「連れて行ってくれた友人に確認してから予約する」「ケースバイケース」という回答でした。前回も触れたように、店と客の間にはさまざまな関係があります。現代では、まずは連れて行ってくれた友人と店との関係を知り、関係性や距離感に配慮しながら次のステップに進むという「調整型」の存在が目立ちます。

 

友人間であっても、店を紹介する、されるというのは難しいもの。「人に店を紹介したときのエピソード」を自由回答で聞いたところ、「嫌な経験」として「お店で暴れられた」「SNSで『行ったけれど美味しくなかった』と書かれた」という驚くようなものから、「二度と行くかと言われた」「高いと言われた」と直接文句を言われたり、「まずかったらまずかったでむしろ教えてほしい」という人もいました。

デジタル・ネイティブ世代のあたりまえを考える

過去、食事のマナーの多くは「いかに場の雰囲気に調和するか」をベースに構築されてきました。言い換えれば「他の客や店が不快にならないよう振る舞う」ことがマナーの土台にはあるはずです。

その昔、どんな店にも共通するマナーがあった頃、マナーは規則のように機能していました。もちろんいまも高級なレストランに行けば一定の規則めいたマナーはあります。たとえばレストランで、Tシャツ、短パンの男性が入店を断られたり、高級店にはジャケットや襟つきのシャツを着なければ入店できない店もあります。

 

一方、昔はNGの店も多かった「Gパン」は、「ダメージでなければOK」という店がほとんどです。

哲学者の鷲田清一は「服を着るということは、自分の身体イメージと社会秩序とのすり合わせをするということ」と論じています。移ろいゆく「社会秩序」に身体イメージをすり合わせるのがファッションなら、その場の雰囲気まで含めたおいしさをすり合わせていくのが現代の食事のマナーの考え方なのかもしれません。

 

一昔前、社会がたばこを許容していた頃は、ランチを食べている客の隣席で食べ終えた客が一服するといった光景はごく当たりまえでしたが、現代ではそんな光景はほとんど目にしなくなりました。「社会秩序」は変わるものです。

 

近年の飲食店で大きく意識が変わったものに、「撮影」があります。今回の調査項目には「飲食店勤務の方に伺います。客の料理撮影は?」という項目がありましたが、ここに店と客の「社会秩序」の大きなズレが現れていました。

 

最近では飲食店で客が料理を撮影する光景は日常的なものになりましたが、回答は「OK」(14.8%)、「NG」(8.2%)、「できれば、早く食べていただきたい」(29.0%)。そして「無回答」がなんと48.1%

 

「ノーコメント」に複雑な思いが込められているのは世の常ですが、客側からするともはや「日常ごと」になった料理の撮影も、店側は手放しで認めているというわけではないようです。

 

撮影側も、無音でシャッターが切れるアプリを入れたり、音の出るスピーカー部分を手で押さえるなど、少なくとも「音を立てる」ことへの配慮をする人は増えたようにも思えますが、一方でSNS映えする写真を撮ろうと、長々と撮影する人はむしろ増えた印象もあります。

 

体系化されたマナーは、店と客、客同士が快適に同じ空間を共有するための暗黙の了解ーー非言語コミュニケーションツールでもあります。しかし、さまざまな業態がある現代の飲食店では、どこででも通用するたったひとつの万能のマナーはもはや存在し得ないのかもしれません。

 

インバウンド華やかなりしいま、文化の違う国からの訪問客も増えました。「暗黙の了解」が通用しない客を相手にするには、店側は理想とする雰囲気を実現するためのコミュニケーションを策定する必要があります。

時代とともに変化するマナーや常識。柔軟な対応を

誤解されがちではありますが、「お客さまは神様」ではありません。本来、店と客は対等であり、だからこそ互いの間には最低限の気遣いが必要なのです。店も客も「場にふさわしい振る舞い」を感じ取り、他者との調和をはかる。それはすべてのコミュニティーで暮らす者のつとめであり、もっと言えば、社会で必要とされる振る舞いは、食事の場面でも求められるということなのです。
初めての店で適切な振る舞いがわからないのは、むしろ当然のこと。わからないことは店や常連に聞いてみましょう。

 

時代とともに常識やマナーは変わります。わからないことは恥ずかしいことではありません。「こうでなければならない」と自分なりの常識にとらわれることなく、マナーや常識を更新する柔軟性はいつの時代も手離してはなりません。もちろん、そこには従来のマナーを尊重する姿勢も含まれるのですが。

 

(文:松浦 達也)

記事内のアンケート結果の数字はすべて、肉メディア調べ