• TOP
  • Column
  • 牧場探訪「木下牧場」(後篇)

2016.01.05

牧場探訪「木下牧場」(後篇)

さて、後半は「どんなこだわりを持って牛を育てているか」についてうかがって行きます。

牧場探訪「木下牧場」(後篇)

家族経営の小規模牧場だからこそやれることがある!

繁殖肥育一貫経営が軌道に乗るにつれて、木下さんは美味しくて健康な牛を育てるためのさまざまな試みにもチャレンジしていくことになります。そのひとつが生育環境や飼料に対するこだわりです。木下牧場では、できるだけ国産の飼料を使い、放牧でのびのびと牛を育てることを心がけているといいます。

「人間が食べても安全な国産トウモロコシや大豆、酒粕などの食材にできるだけこだわり、それらを自家配合した飼料を使っています(プレミアム牛は100%国内飼料のみを使用)。でも、なによりこだわっているのは、個々の牛たちの体調をしっかり見て、その状況に合った飼料を与えるということ。季節や体調によって飼料の量や中身を変えてあげてこそ、牛は健康に育つんです。人間の子どもだって同じです。元気な子と体調の優れない子に同じ食べ物を与えたりしませんよね。だからうちでは自動給餌器は一切使わず、一頭一頭に声をかけながら手でエサをあげているんです。家族4人だけでやっている小規模牧場ですが、規模が小さいからこそやれることがある。一頭づつの顔が見えない飼育には興味がないんですよ」

自分が食べて本当に美味しいと思ったものを提供したい

たっぷり愛情を注がれながら、ストレスのない環境で育てられた牛は、赤身が中心でサシも少なめですが、木下牧場ではサシを無理に入れて牛に負担を与えるのではなく、「健康に育った牛肉こそが美味しい」という独自のポリシーを持って牛を育てているそうです。
「うちではサシの入り方にはこだわらないし、格付けも意識しません。多くの皆さんはサシが均等に入っていれば美味しいと思っているようですが、じつは健康でストレスのない環境で育てられた牛と、無理にサシを入れた牛とでは、同じ霜降り肉であっても脂の質がまったく違うんですよ。一度食べ比べてみていただければ、牛肉は見た目だけでは判断できないことが分かるはずです」

 

また、木下牧場は県内最初(2006年)に牧場内にカメラを設置し、牛たちがどんな環境で育てられているのかを消費者がリアルタイムで24時間視聴可能な動画配信システムを導入。こうした新しい取り組みも、食の安心安全につながっているといっていいでしょう。最後に木下さんはこんなふうに未来への展望を語ってくれました。

 

「近江牛という銘柄牛発祥の地からすれば、サシにこだわらない私たちの飼育法は少々邪道に映るかもしれません。国産飼料や個別の餌やりにこだわったやり方も、一円でも高く売りたいという経営の側面からいうと非効率的です。でも、うちの牧場では「自分が食べて本当に美味しいと思うもの、安全だと思うもの」を提供することこそが、自分たちの役目であり喜びだと感じているんです。これからも「木下牧場らしい牛肉」を消費者のみなさんに届けるためにさらに努力していくつもりです。TPP参加が決定して、国内畜産業の影響が懸念されていますが、ほかにはない「ゆるぎないもの」を持ってさえいれば、畜産の未来は明るいはずですよ」。

 

 

(取材・文:中村宏覚)

木下牧場

〒523-0802

滋賀県近江八幡市大中町 木下牧場