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2016.04.07

牧場探訪「くずまき高原牧場」(後篇)

岩手県のほぼ中央に位置し、飼育牛頭数&牛乳生産量ともに東北一を誇る「酪農の町」葛巻町。町を代表する観光スポットとして親しまれているのが「くずまき高原牧場」です。彼からが考える観光牧場としての存在意義とは?

牧場探訪「くずまき高原牧場」(後篇)

手間ひま掛けて育てた牛肉は、ブランド牛に負けていない

前篇では、生き残りのためのイノベーションとして観光牧場へと舵を切ったというお話をしましたが、その後のくずまき高原牧場は、多くの観光客が訪れる人気スポットとなり、やがては経営的も安定。ちなみに葛巻町の人口が約7,000人なのに対し、現在の牧場来訪客数は、なんと年間30万人を超えているそうです。
牧場内では、乳搾り、アイスクリーム作り、子牛の飼育体験など、さまざま体験メニューや、四季折々のイベントが楽しめるだけでなく、レストランや焼き肉ハウスでは、牧場で生産された牛肉を味わうことも可能です。
この牧場では、生産した肉は一切市場には出荷せずに牧場内での提供&ネット直売のみにこだわっているそうですが、これにも経営的な理由があると、前原さん(広報担当部長)はおっしゃいます。

 

「岩手県内では「前澤牛」がブランド牛として有名ですが、葛巻町で生産した牛肉は同じ肉質であってもブランド牛とは認められません。そのため市場に出したとしても、前澤牛の半分の価格でしか取引されないのです。つまり、ブランド牛と勝負しようと思ったら、コストを出来るだけ下げなくてはいけなくなる。でも、それをやると安心安全にこだわった肉を提供するという畜産本来の理想とはかけ離れてしまいます。だったら手間ひま掛けて丁寧に牛を育てて、自分のところで食べてもらったほうがいいってことになるわけです」。

 

さて、気になるのがお肉の味ですが、広い牧場内でたっぷり運動させながら、良質の飼料を与えて育てているというだけあって、くずまき牛は肉質も味も高価なブランド牛に決して負けてはいません。焼き肉として提供する際には、モミダレなどを使った味付けは一切しないーーという、こだわりからも自信のほどがうかがえます。

「いただきます」の本当の意味を子どもたちに伝えたい

美味しいお肉を味わうためだけに訪れても十分価値がありそうな施設ですが、前原さんは、観光牧場には単に肉を味わったり、体験を楽しんでもらう役割だけでなく、もっと大きな存在意義があるはずだと語ります。

 

「今の都会のちびっこのなかには、スーパーで売られているスライスされた牛肉は知っていても、動いている牛を見たことがない子も少なくないようです。そんな子どもたちに、自分が普段食べているものがどんなふうに育てられ、どんなプロセスで食卓にのぼるのかを知ってもらいたい。さらには命というものの大切さにも改めて気づいて欲しい。観光牧場というと遊びにいく場所というイメージがありますが、見方を変えれば、食の大切さや命の意味を子どもに学ばせる「教育の場、情報発信の場」にもなりえると私は思うのです」。

 

私たち日本人は、普段食事の前には「いただきます」と、当たりまえのように手をあわせますが、もともとはこの言葉には「動物や植物の命をいただきます」という感謝の気持ちが込められています。美味しい肉の向こう側には、牛たちの命や、それを手間ひまかけて育てている人々が存在しています。

観光牧場を訪れた際には、そんな話を子どもたちに聞かせてあげてみてはいかがでしょう。すべての命と存在に感謝するーー子どもがそんな意識を持てるようになれば、美味しいものがさらに美味しく感じられるようになるし、食事を食べ残すこともなくなるはずです。

 

 

(取材・文:中村宏覚)

くずまき高原牧場

〒028-5402

岩手県岩手郡葛巻町葛巻40-57-125

 

■公式web:http://kuzumaki.jp/

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