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2016.04.13

イエニクのススメ から揚げ編 第1回

イエニク2ndシーズン。「大人の肉ドリル」でおなじみ、松浦氏がお家でおいしいお肉料理を満喫できる肉レシピを公開!

イエニクのススメ から揚げ編 第1回

おいしいから揚げってなんだ?

数年前、とある取材で北海道から九州まで、全国のから揚げ店を巡ったことがある。地域の数だけ、店の数だけから揚げにはバリエーションがある。例えば九州の大分には宇佐・中津という”から揚げの聖地”がある。地元では「コンビニよりから揚げ専門店のほうが多い」とまで言われるほどだし、県南の佐伯にはもも肉の一本揚げもある。

 

「北海道独自のから揚げ」(と言うと、道民の友達には叱られるが)として知られる「ザンギ」にしても、そのレシピは地域や店ごとに異なる。他のエリアでも、名古屋には手羽先のから揚げが根づいているし、新潟にはカレー味のもも肉の一本揚げがある。

 

写真左:宇佐のから揚げ。地元では持ち帰り用の袋ごと皿に盛り、袋を破って食べる家庭も。

ポイントは「からりと揚がった衣」と「ジューシーな肉質」

全国のから揚げには、無限のバリエーションがある。では家庭で目指したい「おいしいから揚げ」とはどういうものか。

 

満たすべき条件はふたつ。「からりと揚がった衣」と「ジューシーな肉質」である。味は濃すぎなければいい。鶏肉は牛肉や豚肉と違って、宗教的な禁忌も少なく、世界中で食べられている。味つけのベースは醤油、塩、塩麹にカレー粉など、そのレンジは広い。足りなければ卓上で足せばいい。実際、釧路ザンギなどは卓上で好みの味に仕上げるわけで、濃すぎなければから揚げは成立するのだ。

写真右:釧路ザンギはベースの味つけは薄め。つけダレで味を整える。

人気店のから揚げ共通するもの

まず「からりと揚がった衣」について。

人気店の衣には共通点がある。北海道の釧路ザンギから大分は宇佐・中津のから揚げまで、人気店は例外なく「でんぷん」、つまり片栗粉を使っていた。下味を入れた鶏肉の水気を切って粉をはたく店や、水分をある程度残したまま片栗粉と混ぜ、ねっとりした衣状にする店まで、使い方に多少の違いはあるが、片栗粉の「ザクッ」「ガリッ」とした心地いい食感を重視していた。

揚げ方にも共通点があった。多くの店主が「揚げながら衣を空気に触れさせる」ことを重視していた。曰く「空気に触れさせることで、水分が飛びやすくなり、衣がカラッと揚がる」のだという。確かに、この手法はヨーロッパのフリットでもよく使われる手法である。

他方で「ジューシーな肉質」の解釈は地方や店によって、違いが大きい。釧路ザンギの老舗や新潟の味つけは、主に表面に味を入れる。つまり、肉自体には水分や味を入れずに、肉本来の食感と味をしっかり残す。

一方、大分の宇佐・中津は、漬け込んで肉の内部まで味を染み込ませる。つまり肉への加水と味つけを同時に行い、よりジューシーな仕上がりを目指そうという方向だ。ただし、どちらを目指すにしても、肉全体が安全圏まで加熱されていることは大前提ではある。

目指す正解によって、味入れ、衣づけ、揚げ方などの手法は、当然のように変わる。さて、次回からは、家庭で作るから揚げの考え方を紹介していきたい。

松浦 達也

松浦 達也

東京都武蔵野市生まれ。編集者・ライター。さまざまな「食」を「食べる」「つくる」「ひもとく」フードアクティビスト。調理の仕組みや科学、食文化史などを踏まえ、『dancyu』などの料理誌から一般誌、新聞、書籍、Webまで幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオなどでは食のトレンドやニュース解説も。近著の『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(マガジンハウス)ほか、自らも参加する調理ユニット「給食系男子」名義で企画・構成を手がけた『家メシ道場』『家呑み道場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はシリーズ10万部を突破。

ブログ「うまいものばか!」

http://umaimonoholic.blogspot.jp/