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2016.05.24

和知 徹の世界肉旅行 ぬりえの旅(2)

銀座マルディ・グラシェフ、和知 徹さんによる、肉料理でめぐる世界旅行記

和知 徹の世界肉旅行 ぬりえの旅(2)

肉とマドンナに恋するフランス

フランスの空の下で今日も肉を喰らう

 

青々と茂る草が眩しい、
丘と丘の間を、
電車はビュンビュン飛ばす。
停車駅に近づくとスピードを落とすから、
のんびりと草を食んでいる牛を見られたりして。

 

元々洋服が好きで、
ジャンポール・ゴルチェが柄にも無く好きで、
フランスに行きたいなぁと、
漠然と考えていた。

 

ほどなく、ワインの産地ブルゴーニュと、花の都パリ、
2回にわたって暮らし、沢山の出会いがあった。
ブルゴーニュは、旅籠に住み込みで働いた。
食事がとれて泊まれるオーベルジュ。
そこでシャロレ牛を毎日撫でながら店に行き、
朝から農家のおとっつぁんに混じり、
水割りのワイン(笑)を煽ってからが、
仕込みの始まりだったんだ。
片言のフランス語と、
ミニ辞典をズボンのポケットに入れて、
必死に会話して仕事する毎日。
マドンナ似のフランス女性とデートしたいから、
口説き文句をフランス語で覚えたり(笑)
週末のフランス人は寝ないで遊ぶから、
一緒になって朝まで踊り明かしたり、
高速道路のドライブインで、ミッドナイトステーキ決めたり。
もちろんベリーレア!
そうやって、フランスの牛肉の洗礼を受けたんだ。

 

それから年を重ねて、何度かの失恋を経て……
関係ない?
あるんだ、肉と恋。
ま、そこは置いといて、
ここらでちゃんと、肉を極めないと駄目だなぁと考えていた。
それで、フランス南西部の牛を喰らう旅を考えた。
パリまで飛んで、TGVでボルドーに向かう。
薪の暖炉で、ビフテキを焼く店があって、
それだー!って、めがけて行ったんだ。
肉を中世から食べている民族だからこそ、
旨い食べ方を知っているはずに違いないと、考えていた。
電気やガスでは無く、
火で焼く肉じゃないと駄目だった。
それは、今にして思えば、
肉にストレスをかけたくないから、
柔らかな火で焼き上げるステーキこそ、
最高の肉なのだ! と思い込んでいたから。
実際、間違いでは無いんだけれど。

 

ボルドーからレンタカーをピックアップ。
ミシュランのグリーンガイドとマップを片手に、
産地をグルグル回る旅だった。
ガロロマンからある地質、そこを流れる清流、
香り豊かな草花、寒暖差のある気候、
全ての条件を満たし、牛達はゆっくりと育つ。
とろけるような柔らかさも、コクのある脂も、
和牛とは何もかも違うけれど、
焼き上げると立ち上る香りと、
嚙み締めるほどに出てくる旨味に、
夢中になり恋に落ちた。
根底から、自分の肉料理の概念が覆り、
肉を選ぶ事を、もう一度最初から考える旅になったんだ。

 

だから、ぬり絵の旅は
出発点のフランスからでなくては、いけなかったってわけ。

マルディ・グラ

〒104-0061

東京都中央区銀座8-6-19 野田屋ビル B1F

  • 03-5568-0222

和知 徹

和知 徹

骨太で豪快な料理が魅力、銀座のフレンチの名店【マルディグラ】シェフ。ブルゴーニュの一ツ星「ランパール」で半年間研修後、87年「レストランひらまつ」入社。ひらまつ在籍中の96年、パリ「ヴィヴァロワ」で3カ月研修し、帰国後ひらまつ系列の飯倉「アポリネール」料理長に就任。退職後、98年銀座「グレープガンボ」の料理長を3年務める。01年、独立。和知 徹といえば、肉料理とも言われるほど。