2016.06.08
イエニク2ndシーズン。「大人の肉ドリル」でおなじみ、松浦氏がお家でおいしいお肉料理を満喫できる肉レシピを公開!
さて、から揚げのレシピ本編です。ここまでの話をまとめると、どんなから揚げにでも共通するおいしさを決定するのは以下の要素。これらの要素を足し上げれば、加速度的にから揚げはおいしくなっていきます。
1.肉の保水性を高める加水を行う。→ ジューシーな食感
2.肉の内部温度を上げすぎない。→ 肉質のやわらかさの獲得
3.衣は香ばしくなるよう揚げる。→ 衣に強い食感と香りを付与
気をつけたい点はふたつ。
まず「やり過ぎない」こと。1.が過ぎれば肉に入りきらなかった水分で衣がゆるくなったり、肉の味わいを損ねてしまいます。2.が過ぎれば肉の温度が安全圏にたどり着きません。3.のやり過ぎは言わずもがな、衣が黒焦げまっしぐらです。
そしてもう一点は「食べるシチュエーションを想定する」こと。できたてのアツアツをビールのつまみにするのか、それとも冷まして子どものお弁当のおかずにするのか。「誰のためのどんな料理か」を念頭に置いて調理できるのは家庭料理の最大のアドバンテージです。以下レシピは加水量などの標準型とお考えいただき、味つけなどは好みに合わせてご調整ください。
今回のレシピは『大人の肉ドリル』に載録した肉汁重視のビール向けのから揚げのほか、お弁当向けの違ったタイプのから揚げも新しく追加しておきます。それではまずは大人向けのジューシーから揚げからご紹介!
とにかく肉汁重視。休ませている間に外側の熱を内側に伝え、余熱でやわらかく火を通しましょう。中まで火を入れるためにも、ベンチタイムはきっちり取ってください。肉のサイズ次第では、揚げ時間やベンチタイムを調整することで、2度揚げへのアレンジも可能です。
■材料(2人前)
<肉>
鶏もも肉250g
<調味液>醤油大さじ1、水 大さじ2、砂糖 小さじ1、酒 小さじ1、塩ひとつまみ、にんにく(すりおろし)小さじ1/2、しょうが(国産・すりおろし)小さじ1、胡椒 適宜
<その他>片栗粉 50g サラダ油 適量
■作り方
1.<調味液>の材料をすべて合わせる。鶏肉を一口大(ひとつ35~40g程度が目安)に切り、調味液に漬けて10分ほど置く。別のボウルに片栗粉を用意する。
2.調理直前に調味液を再度、鶏肉にもみ込む。鍋に鶏肉がかぶるくらいのサラダ油を入れ、中火にかける。約180~190℃まで温まったら、鶏肉に片栗粉をつけ、ぎゅっと握って丸く成型して静かに油に入れる。
3.1分揚げたらバットなどに取り、2分休ませる(1度めの揚げは、油に入れて30秒は触らない)。
4.再度1分揚げ、2分休ませたら、最後に10秒揚げる。※180~190℃は熱した油に菜ばしを入れて、泡が勢いよく上がる状態。
非加熱タイプの塩麹と多めのしょうがで、タンパク質分解酵素(プロテアーゼ)を活かす狙い。長時間の漬け込みで肉のタンパク質の変性を促し、きめの細かいやわらかい食感を。「肉汁重視版」よりやや小さめカットで内部温度を上げ、より安全圏へ。塩麹が焦げやすいので、揚げ油の温度は肉汁重視版よりも抑えめに。
■材料(2人前)
<肉>
鶏もも肉250g
<調味液>醤油大さじ1/2、塩麹(非加熱タイプ)大さじ1/2 水 大さじ2、砂糖 小さじ1、塩ひとつまみ、しょうが(国産・すりおろし)小さじ1 1/2、胡椒 適宜
<その他>片栗粉 50g サラダ油 適量
■作り方
1.<調味液>の材料をすべて合わせる。鶏肉を一口大(ひとつ30g程度が目安)に切り、調味液に漬けて30分~数時間置く。別のボウルに片栗粉を用意する。
2.調理直前に調味液を再度、鶏肉にもみ込む。鍋に鶏肉がかぶるくらいのサラダ油を入れ、中火にかける。約170℃に温まったら、鶏肉に片栗粉をつけ、ぎゅっと握って丸く成型して静かに油に入れる。
3.1分30秒揚げたらバットなどに取り、3分休ませる(1度めの揚げは、油に入れて30秒は触らない)。
4.再度1分30秒揚げる。
※約170℃は熱した油に菜ばしを入れると、やや大きめの泡が上がってくる状態。細かい泡が静かに上がってくる状態はもう少し低い温度。キッチン環境などで多少のブレは出てくるので、最初の一個は揚げ上がり30秒後を目安にカットして中まで火が通ったかご確認を。
似た材料を使っても、ちょっとした作り方の違いで変わるのもから揚げのいいところ。自分好みのから揚げを見つけて、よきから揚げフライ……じゃなくて、から揚げライフをお過ごしください!
東京都武蔵野市生まれ。編集者・ライター。さまざまな「食」を「食べる」「つくる」「ひもとく」フードアクティビスト。調理の仕組みや科学、食文化史などを踏まえ、『dancyu』などの料理誌から一般誌、新聞、書籍、Webまで幅広く執筆、編集を行う。テレビ、ラジオなどでは食のトレンドやニュース解説も。近著の『家で肉食を極める! 肉バカ秘蔵レシピ 大人の肉ドリル』(マガジンハウス)ほか、自らも参加する調理ユニット「給食系男子」名義で企画・構成を手がけた『家メシ道場』『家呑み道場』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はシリーズ10万部を突破。
ブログ「うまいものばか!」