2016.02.12
教えたいけれど教えたくない、でも仲のよい人には教えたい!
そんな名店を食通がリレー方式で紹介していきます。
長年「人生最後に食べたいものは肉!」と言い続けているが「じゃあ、どの店のどんな肉が食べたいの?」と聞かれたら正直、答えに困ってしまう。いつ「人生の最後」が来てもいいように、普段からシミュレーションをしておかねば。「備えあれば憂い肉なし」の気持ちで、マジメに“最後の肉”を検討したところ思い浮かんだのが、昨年9月にオープンした『ビストロシンバ』だ。
昨年の夏ごろ原因不明の胃痛が続き、肉好きライターとしての生命が絶たれるかと不安な日々を過ごしていたときに訪れて、文字通り胃袋をがっしりと掴まれた。店内はおいしい香りで満たされていて、弱り切った私の食欲スイッチも自然にオン。ローズマリーの力強い香気をまとって登場した土佐あか牛のグリルは、断面がうるうるとルビー色に輝いており、噛めば噛むほど肉の旨みがじゅわじゅわと広がる。それまで鎖国ならぬ、“鎖肉”状態だった胃袋が、ふたたび活性した瞬間だった。以来、恩人(?)とも言える肉を求めて、通い愛を貫いているが体調がすぐれないときやイマイチ元気がないときでも、『シンバ』の肉はいつも変わらず、私の胃袋を力強くやさしく満たしてくれる。
店名の“シンバ”には、シェフの菊地佑自さんが志すSimple、Saveur(風味)、Sympa(素敵な)といった意味が含まれているそうで、食材のエネルギーがダイレクトに伝わる料理、心地の良いサービスと空間は気持ちをゆったりとリラックスさせてくれる。看板に偽りなしとは、こういうこと。
グリル料理はあか牛のほかに稀少な見蘭牛や酵素ポーク、浅野豚などを提供しており(時期、仕入れによって異なる)、ストレスをかけないよう丁寧に焼き上げられた肉は、食べるほどにすこやかなエネルギーが体内にゆっくり満ちていくよう。自家製シャルキュトリーや冬のジビエも素晴らしいが、シェフの食材愛を感じる魚料理も、ぜひお試しを。
“味噌汁とご飯”にも共通するような、心の深部に沁みる癒し肉こそ「人生最後」にふさわしいのかもしれない。
〒104-0061
東京都中央区銀座1-27-8
営業時間:18:00~L.O 24:00
休:月曜、第2火曜