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2016.03.22

あの人のけしからんレストラン「肉匠堀越」

教えたいけれど教えたくない、でも仲のよい人には教えたい!
そんな名店を食通がリレー方式で紹介していきます

あの人のけしからんレストラン「肉匠堀越」

紹介してくれた人 森脇 慶子さん

いやいやホントに迷いました。どの店にするべきかー。
「あら皮」仕込みの窯焼きステーキが旨い「神戸牛炉釜焼ステーキIDEA  銀座」もいいし、銀座「加藤牛肉店」のステーキ盛り合わせも魅力的。銀座「吉平」の和牛Tボーンステーキもダイナミックさでは負けてはいないし、それならば、先日、亀戸「メゼババ」食したチンタセネーゼの仔豚の焼きハム、いっそ、これにしてしまおうか……etc.逡巡すること10数日。
自己単独肉リレーで完結してしまってどうするんだ! と自らに突っ込みを入れつつ悩んだ末に決めたのが、ここ「肉匠堀越」。
地味な立地ながら大人の美食店が点在する日赤通りに、去年の8月オープンした期待のルーキーだ。

 

ビルの2階。焼肉屋というよりは和食店の趣を漂わせる店構えから察するとおり、個室中心の店内で供されるのは、割烹スタイルの焼肉コース。

「場所柄、競合店が多いので、他所と違う色を出したかったから」
とは、ご主人の末富信さん、30歳。そこには末富さんの出自が少なからず、影響している。
というのも、信さん、実はあの魚料理の名店麻布十番「富ちゃん」の二代目。店を継ぐ使命を受けつつも、20歳の頃、肉好きが昂じて焼肉のメッカ大阪へ。
父親には関西割烹の店で勉強することを名目にしていたが、その実、働いていたのは焼き肉店。2年間ほど肉のノウハウを学んで帰京するも後に父親にばれて大目玉。半ば強制的に河豚の免許をとらされ、六本木店の店長兼調理長を任されたそう。そして約7年間、割烹店を仕切った後、「肉匠堀越」をオープンさせるのだが、その経験がいまに生かされていると言ってもいいだろう。

 

お任せのコース(8,000円と9,000円)では、真紅の光沢も艶やかな“ハツ刺し”や、牛テールの出汁で作った“茶碗蒸し”、お凌ぎ代わりの“山形牛しゃぶしゃぶユッケ丼”など、和の要素を加味した小鉢肉料理が次々に登場。続く焼肉にしても、ハラミの西京焼きやゆがいたクレソンを巻いていただく牛ロースや肩三角などさりげない和テイストが楽しみだ。そして、締めはなんと肉の炊き込みごはん。

牛舌や卵かけスタイルで頂くザブトンの炊き込みごはんなどバリエーションも豊富だが、個人的に気に入っているのは、“ホルモンの炊き込みごはん”。
シマチョウ、頬肉、ギアラにリー ド ボーの4種類を使用した逸品で、肉出汁ではなく、敢えて昆布と鰹の一番出汁で炊き上げているところがミソ。
全体的にはあっさりとした仕上がりながら、ホルモンの脂の甘みや旨味が米一粒一粒にじんわりとしみ込み、米本来の甘みともあいまって実に絶妙な味加減となっている。

 

因みに現在、店で扱っているのは、脂の融点が鮪ほど低い但馬牛や山形牛を中心に、尾崎牛と茨城の紫峰牛の4種類。いずれも、末富さん自ら牧場を尋ね、生産者と会い、その目で納得した牛だけを牧場から買い付けている。また、それ以外でも気になる牛や牧場があれば、マメに足を運ぶ熱心さが身上。肉質のよさを支えるキーワードでもある。
中でも、特筆すべきは牧場直送の内臓類。
その日の朝、屠殺されたものが、当日の夜には届く新鮮さで、炙りレバーなどは、思わずそのまま食べてしまいたい衝動にかられるほど。これも、ご主人の熱意の賜物だろう。
始動して約8ヶ月。只今、発展途上真っ最中の「肉匠堀越」。まだまだ試行錯誤の毎日だが、末富さんの絶え間ない肉愛と美味しいものへの執念がある限り、その伸びしろは十分。これからも応援していきたい一軒だ。

肉匠堀越

東京都港区南青山7-11-4 HT南青山ビル2F

営業時間:(月~金)11:30~15:00/17:00~翌00:00(L.O)
(土・日・祝)11:30~15:00/17:00~翌00:00(L.O)
休:無休

■公式web:http://nikushou-horikoshi.com/

  • 03-5464-2929

森脇 慶子さん

森脇 慶子さん

「dancyu」や女性誌などで広く活躍する料理ライター。

毎日、取材はもちろん、プライベートでもひたすら食べ歩く日々。著書は「アジアンマダムのやさしいごはん」(廣済堂出版)、「有名レストランの賄いレシピ」(ぴあ)など多数。