2016.02.16
今回はどんな白がよいのかをお話していこうと思います。
お相手が「肉」だけあって酒質に厚みのあるもの、かといって「赤身」なので、フルーツ爆弾的な「どうだどうだ」ではなく、程よくはね返してくる「肉置き(ししおき)豊か」がお好みですね。そう、口に含むと温度計の表示よりも温かく感じるたぐいです。
さらに、決して舌に立たず、 じんわりと舌ベロを抱き込むような酸味と赤身肉の持つ鉄系の余韻に、屹立とした「クールビューティー」ではなく、あくまでも優しくリエゾンして大河の流れにリリースしてくれる「コシの太い」ミネラルがあればもうシアワセです。
そこで、ボスセレクション No.1は、ブルゴーニュのシャルドネ
ドメーヌ・トプノー・メルム サン・ロマン ブラン 2011
サン・ロマン村はムルソーに隣接する絶妙の場所に位置するアペラシオン
ここのシャルドネはムルソーに似たふくよかさと上質だが厳しさの無い酸を持つ。
殊にこのトプノー・メルムは微かにトロピカルなニュアンスとしなやかで温かみのある
酸とミネラル。赤身肉の機嫌を損なわずに捌いてくれるのです。
赤身肉を召し上がる一つ前の前菜から合わせながら、自然に温度が上がり、
ミネラルが程よく緩んだタイミングで肉と合わせて行くのがベストですね。
そして王道ペアリングの赤を選ぶならば・・
もし、霜降りの肉がお相手ならば、ボリュームのある酸とタンニンで
脂を捌いていかねば、旨味が溜まって来てンプンプしてしまいますが・・・
短角の赤身であればとびきりパワフルだったり、酸味満載な赤ワインの必要は無い。
特に、ヌッフではソースを引かずに、肉に塩コショウを振るだけですから、ワイン自身がソース代わりになる様なイメージですね。
赤身肉を噛み締めたときに肉の繊維の間に浸み込んでくれるような、滑らかさと、決してエキセントリックではないおおらかさをもっている。
そこで、ボスセレクション No.2 は コート・デュ・ローヌより
ドメーヌ・シャルボニエール シャトー・ヌッフ・デュ・パプ 2011
店名と同じだからのセレクトではなく、これはまさしく天啓。
味わいをリードするのはグルナッシュ、滑らかで重心が低すぎないのがミソ。
ともすれば甘やかに振れがちのグルナッシュ。そのせいか市場では人気が上がりませんが、この品種、赤身肉と合わせるならばど真ん中だと惚れ込んでおります!
シャトー・ヌッフは13種類ものセパージュを栽培・醸造することが許されています。
従ってワインがそもそも複雑性を獲得しているのです。このミルフィーユ状の味わいが噛み締めた赤身肉の旨味のひだひだに浸透して、一体感を織りなすのです。肉と対峙する! という決意に満ちたものでなく、肉に寄り添い、のたりと包み込んでくれるそんな包容力のあるワインがシャトー・ヌッフであるのです。
シャトー・ヌッフならば抜栓したてから(若いヴィンテージでも)その複雑性をいかんなく発揮してくれるので温度さえ間違わなければ、面倒なことに陥らないのもポイントです。
(世の中が単純化、潔癖化へと傾斜しており、ワイン業界もモノ・セパージュ全盛ですが
混植・混醸という切り口は実はとても文化的に豊かなことだと感じておりますし、実際、ブレンドもしくは混醸のワインは、テーブルの上でとんでもなくポテンシャルを発揮します。)
今回は 白はサン・ロマン、 赤はシャトー・ヌッフをセレクトしました。
次回からは 「赤身肉=短角牛」を部位別のペアリングを展開していきます。
(イラスト:後藤 晴彦)
〒106-0032
東京都港区六本木7-17-19 FLEG六本木Second 2F
営業時間:17:00~24:00
休:日曜日※月曜日が祝日の場合は日曜日営業、翌、月曜日休み
ワイン居酒屋「ヌッフ・デュ・パプ」のオーナー。ボスの愛称で親しまれている。
有楽町西武あった今や伝説の酒売り場、「酒蔵」に在籍し、1995年に盛岡で「ヌッフデュパプ」のオープンニングスタッフとして参加。2007年に経営を引き継ぎ、2012年に「ヌッフデュパプ 六本木」をオープンさせる。
現在、岩手の情熱溢れる造り手たちによって生産された真に価値高い食材と東京の消費者を料理とワインで繋いでいる。